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▼子どもの様な国だ

 
 子どもの様な国だ。

 農業を見る上で大切なのは農地と労働力。近年、この二つの減少が著しい。まず農地。2014年から2019年までの5年間で日本の農地のほぼ10万haが減少した。そう言われてもピンと来ないだろうが、どこに行っても田んぼだらけという山形県の水田面積が8・8万haであることを考えれば、その失った広さが想像できる。その他にも耕作放棄された農地が70万ha近くある(2017年調べ)。日本の自給率がわずか38%しかなく、日本人は食べ物の62%を輸入に頼っている中でのことだ。良く言われるように、これは「先進国」の中でも最低の数字だ。
 
 次は労働力。農家の平均年齢は68.5歳。ほぼ70歳に近い世代が農業の中心となっていて、高齢化というよりは老齢化だ。そんな中ですら進められているのが小農(家族農業)の離農促進と、農業経営の大規模化、法人化である。その方が合理的だということだろう。ところが実際は、肝心の若い世代を含め、全体的に農業そのものから離れていっている。就農人口の60%が65歳以上であり、35歳未満の働き盛りはわずか5%でしかないという現実がそのことを物語っている。
 
 ここで改めて、広く人々に問いたい。農業政策、食料政策はこのままで本当にいいのか。その結果についての覚悟はできているのか。どこかよそ事として眺めてはいないか。
 あらためて言うまでもないが、人は車がなくても生きては行けるが、食料がなければ生きていけない。食の道が途絶えたら、食料を持っている国に土下座するしかない。哀願するしかない。
農業の問題は、国民のいのちの問題であり、国の自立、尊厳にかかわる問題だ。ここでも食糧大国、アメリカへの従属外交にならざるを得ないだろうか。
 
 この進行する農の危機、いのちの危機について、我々がいくら口を酸っぱくして指摘しても、ほとんどの人は分からない。洪水は足元まで来ているのにそれに気付けない。スーパーでもどこでも食料品があふれているからだろう。でも、人災、天災が一たびこの国を襲えば、想像したくない光景が誕生するだろう。気づいた時にはもう遅い。この国の国民は、歴史から学ぶ力を持ち合わせていないのだろうか。
 
 子どもの様な国だ。

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