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▼鏡の法則

ある方からのメールに記載されていた話です。

今日朝読んでいたら涙が止まらなくなりました。

自分に重ねあわせて考えちゃいますね。

 

以下野口嘉則さんの話です。

長文ですが大変良い話です。是非読んでみて下さい。

 

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◎ 人生のどんな問題も解決する知恵「鏡の法則」

A子(主婦、41歳)には悩みがあった。
小学校5年生になる息子が、学校でいじめられるのだ。

いじめられるといっても、暴力までは奮われないらしい。
友達から仲間はずれにされたり、何かあると悪者扱いされたりする事が多いようだ。

息子は『いじめられているわけじゃない』と言い張っているが、息子を見ていると、寂しそうなのでA子は胸が痛むのだ。

息子は野球が好きなのだが、友達から野球に誘ってもらえないので、学校から帰って来たら1人で公園に行って、壁とキャッチボールをしている。

2年位前には、息子が友達と一緒に野球をしていた時期もある。
当時のことなのだが、A子が買い物の帰りに小学校の横を通りかかった時に、グランドで息子が友達と野球をしていた。

息子がエラーをしたらしく、周りからひどく責められていた。
チームメイト達は、容赦なく大きな声で息子を責めた。

『お前、運動神経が、にぶ過ぎだぞ!!』
『お前のせいで3点も取られたじゃないか!!』
『負けたらお前のせいだぞ!!』

A子は思った。
『確かに息子の運動能力は高くない。
しかし、息子には息子のイイ所がある。
とても心が優しい子なのに』

A子は、自分の息子のイイ所が認められていない事が悔しかった。
そして、ひどいことを言うチームメイト達に対して、自分の息子が笑顔で謝っているのを見るのが辛かった。

その後まもなく、息子は野球に誘われなくなった。
『お前はチームの足を引っぱるから誘わん』と言われたらしい。

息子にとって、野球に誘ってもらえない事が一番辛いようだ。
A子へのやつ当たりが目立って増えた事からも、それが分かる。

しかし息子は、辛さや寂しさを決して話してはくれなかった。
A子にとって一番、辛いのは息子が心を開いてくれない事だった。
『僕は平気だ』と言い張るばかりなのだ。

A子が『友達との上手な関わり方』を教えようと試みても
『うるさいな!!放といってよ』と言ってくる。

『転校しようか?』と持ちかけた時は『そんな事をしたら一生、恨むよ!!』と言い返してきた。

息子の状況に対して、自分が何もしてやれない事が情けなく、A子は無力感に陥っていた。

そしてある日、学校から帰宅して公園に行ったばかりの息子が不機嫌な顔で帰ってきた。

『何があったの?』と聞いても『何もない』と言って教えてくれない。
真相は1本の電話で明らかになった。

その夜、親しくしている御近所の奥サンから電話がかかってきたのだ。

『A子さん、○○君(A子の息子の名前)から何か聞いてる?』

『えっ?いいえ』

『今日、公園でウチの下の子供をブランコに乗せていたのよ。
○○君は、いつもの壁にボールを投げて遊び始めたわ。
するとね、○○君のクラスメイトらしい子達が7、8人くらいやって来てね、
「ドッジボールするから邪魔だ!!」って○○君に言うのよ。
しかも、その中の1人がボールを○○君にぶつけたのよ。
○○君、直ぐに帰って行ったわ。
私としては、その場で何も出来なくて申し訳なかったと思ってね』

A子は愕然とした。
『そんな事を私に黙っていたなんて』
そんな辛い思いをしていながら、自分に何も言ってくれない事が悲しかった。

その日は、改めて息子から聞き出そうという気力も湧いてこなかった。

翌日、A子はある人に電話をかけることを決意した。
その人とは、夫の先輩に当たるB氏だ。

A子は、B氏とは話した事もないのだが、1週間前に夫からB氏の名刺を渡された。

B氏は、夫が高校時代に通っていた剣道の道場の先輩である。

夫も20年位、会っていなかったらしいが、夫が最近街を歩いていたら、たまたまバッタリと出会ったという事だった。

久々の再会に盛り上がって喫茶店に入り、2時間も話したらしい。
B氏は、今は経営コンサルタントを仕事にしているそうだ。

夫の話では、B氏は心理学にも詳しく、企業や個人の問題解決を得意としているとの事。

そこで夫が息子のことを少し話したら
『力になれると思うよ』と言って名刺を渡してくれたそうだ。

夫は、その日『お前の方から直接電話してみろよ。
話を通しておいてやったから』と、その名刺を渡してきた。

A子『どうして私が、そんな知らない人にまで相談しなきゃいけないの。
あなたが直接、相談したらいいじゃない』

夫『俺が心配なのは、お前の方だ。
○○の事で、ずっと悩み続けているじゃないか。
だから、その事をBサンに相談したんだ』

A子『私に問題があるっていうの?
私が悩むのは当然よ!! 親なんだから。
あなたは一日中、トラックに乗ってりゃイイんだから気楽よね。
実際に○○を育てているのは、私なんだからね。
あなたは一緒に悩んでもくれない。
そのBサンに相談なんてしないわ。
どうせその人も、子育ての事は何も分からないに決まっているわ』

そう言ってA子は、その名刺をテーブルの上に投げた。
しかし、昨日の出来事(近所の奥サンから聞いた話)があって、A子はすっかり落ち込み、ワラをもすがるような気持ちになっていた。

『こんな辛い思いをするのはイヤだ。誰でもいいから助けて欲しい』
そう思った時に、B氏の事を思い出したのだ。 幸い名刺は直ぐに見つかった。

息子が学校に行って1時間位、経った頃、意を決してB氏に電話をかけた。
その時、A子はその日に起きる驚くべき出来事を、想像だにしていなかった。
受付の女性が出て、B氏に取り次いでくれた。

A子は自分の名前を告げたものの、電話に出てきたB氏の声がとても明るかったので
『こんな悩み事を相談してもいいのか?』という気持ちになった。

次の言葉がなかなか見つからなかったのだが、B氏のほうから声をかけてきてくれた。

『もしかして○○君の奥さんですか?』

『ハイ、そうなんです』

『あ〜、そうでしたか。初めまして』

『あの〜。主人から何か聞かれていますか?』

『ハイ。御主人から少し聞きました。息子さんの事で悩まれているとか』

『相談に乗って頂いていいのでしょうか?』

『今、1時間位なら時間がありますので、よかったら、この電話で話を聞かせて下さい』

A子は、自分の息子がいじめられたり、仲間外れにされている事を簡単に話した。
そして、前日にあった出来事も。

ひととおり聞いて、B氏は口を開いた。

『それは辛い思いをされていますね。
親としては、こんな辛い事はないですよね』

その一言を聞いて、A子の目から涙が溢れてきた。

A子が泣き始めたのに気付いたB氏は、A子が落ち着くのを待って続けた。

『奥サン、もしあなたが"本気"でこの事を解決なさりたいなら、それは恐らく難しい事じゃありませんよ』

A子は『難しい事じゃない』という言葉が信じられなかった。

自分が何年も悩んで解決できない事だったからだ。
だけど、B氏の言葉が本当であって欲しいと願う気持ちもあった。

『もし解決できるなら、何だってやります。
私は本気です。だけど、何をやれば解決するんですか?』

B氏『では、それを探りましょう。
まず、ハッキリしている事は、あなたが、誰か身近な人を責めているという事です』

A子『えっ?どういう事ですか?』

B氏『話が飛躍しすぎていますよね。
まず理論的な事をじっくり説明してから話せば良いんでしょうが、それをすると何時間もかかるし、私もそこまでは時間が無いのです。
なので、結論から話します。
理論的には根拠のある話なので後で、参考になる心理学の本等を教えます。
結論から言います。
あなたが大事なお子サンを人から責められて悩んでいるという事は、あなたが誰か感謝すべき人に感謝せずに、その人を責めて生きているからなんです』

A子『子どもがいじめられるという事と、私の個人的な事が、なぜ関係があるんですか?
何か宗教じみた話に聞こえます』

B氏『そう思われるのも、無理もないです。
われわれは学校教育で、目に見えるモノを対象にした物質科学ばかりを教えられて育ちましたからね。
今、私が話している事は"心理学"では随分、前に発見された法則なんです。
昔から宗教で言われてきた事と同じようなものだと思ってもらったら分かりやすいと思います。
私自身は何の宗教にも入っていませんけどね』

A子『その心理学の話を教えて下さい』

B氏『現実に起きる出来事は、1つの『結果』です。
『結果』には必ず『原因』があるのです。
つまり、あなたの人生の現実は、あなたの心を映し出した鏡だと思ってもらうとイイと思います。
例えば、鏡を見る事で『あっ、髪型がくずれている!!』とか『あれ? 今日は私、顔色が悪いな』って気付く事がありますよね。
鏡が無いと、自分の姿に気付く事が出来ないですよね。
ですから、人生を鏡だと考えてみて下さい。
人生という鏡のおかげで、私達は自分の姿に気付き、自分を変えるキッカケを得る事が出来るのです。
人生は、どこまでも自分を成長させていけるようにできているのです』

A子『私の悩みは、私の何が映し出されているのですか?』

B氏『あなたに起きている結果は「自分の大切なお子サンが、人から責められて困って いる」ということです。
考えられる原因は、あなたが「大切にすべき人を、責めてしまっている」という事です。
感謝すべき人、それも身近な人をあなた自身が責めているのではないですか?
1番、身近な人といえば御主人に対してはどうですか?』

A子『主人には感謝しています。
トラックの運転手として働いてくれているおかげで、家族が食べていけてるのですから』

B氏『それは何よりです。では、ご主人を大切にしておられますか?
尊敬しておられますか?』

A子は『尊敬』という言葉を聞いた時にギクッとした。
A子は、日頃から夫の事を、どこか軽蔑しているところがあったからだ。

A子から見て、楽観的な性格の夫は『思慮の浅い人』に見えた。
また『教養のない人』にも見えた。

確かに、A子は四年制の大学を卒業しているが、夫は高卒である。
また、それだけではなく夫は言葉ががさつで、本も週刊誌くらいしか読まない。

読書が趣味のA子としては、息子に『夫のようになって欲しくない』という思いがあったのだ。

A子は、その事もB氏に話した。

B氏『人間の価値は教養や知識や思慮深さで決まる』と思っておられますか?』

A子『いえ、決してそんな風には思いません。
人それぞれ強みや持ち味があると思います』

B氏『では、なぜご主人に対して『教養がない』ことを理由に軽蔑してしまうんでしょ うね』

A子『う〜〜〜ん。私の中に矛盾がありますね。』

B氏『ご主人との関係は、どうなんですか?』

A子『主人の言動には、よく腹が立ちます。喧嘩になることもあります』

B氏『息子サンの件で、ご主人とはどうですか?』

A子『息子がいじめられている事は、いつもグチっぽく主人に言っています。
ただ、主人の意見やアドバイスは受け入れられないので、主人にちゃんと相談したことはありません。
恐らく、私にとって主人は一番受け入れられないタイプなんだと思います』

B氏『なるほど。もう1つ根本的な原因がありそうですね。
ご主人を受け入れるよりも前に、そっちを解決する必要があります』

A子『根本的な原因ですか?』

B氏『はい、あなたがご主人を受け入れることができない根本的な原因を探る必要があります。
ちょっと伺いますが、ご自分のお父様に感謝しておられますか?』

A子『えっ? 父ですか?そりゃもちろん感謝してますが…』

B氏『お父様に対して「許せない」という思いを、心のどこかに持っていませんか?』

A子は、この『許せない』という言葉にひっかかった。
確かに自分は父を許していないかもしれない、そう思った。
親として感謝しているつもりであったが、父の事は好きになれなかった。

結婚して以降も、毎年の盆・正月は、実家に顔を見せに家族で帰っている。
しかし、父とはほとんど挨拶ていどの会話しかしていない。
思えば、高校生の頃から、父とは他人行儀な付き合いしかしてこなかった。

A子『父を許してないと思います。だけど、父を許すことはできないと思います』

B氏『そうなんですね。じゃあ、ここまでにしますか?
お役に立てなかったとしたら、申し訳ありません。
それとも、何かやってみますか?』

A子『私の悩みの原因が、本当に父や主人に関係しているんでしょうか?』

B氏『それは、やってみたらわかると思いますよ』

A子『分かりました。何をやったら良いか教えて下さい』

B氏『では、今から教える事をまずやってみてください。
お父様に対する『許せない』 という思いを存分に紙に書きなぐって下さい。
怒りをぶつけるような文書で『バカヤロ〜』とか『コノヤロ〜』とか『大嫌い!!』とか、そんな言葉もOKです。
具体的な出来事を思い出したら、その出来事も書いて『その時、私はこんな気持ちだったんだ』って事も書いてみて下さい。
恨みつらみをすべて文章にして、容赦なく紙にぶつけてください。
気がすむまでやる事です。充分に気がすんだら、また電話下さい。
携帯の番号も教えておきます』

A子にとって、その事が息子の問題の解決に役立つのかどうかは疑問だった。

しかし、それを疑って何もしないよりも可能性があるならやってみようと思った。
A子は『今の悩みを解決できるなら、どんな事でもしよう』と思っていた。
それに、B氏の話には、根拠は分からないが不思議な説得力を感じた。

A子は電話を切ると、レポート用紙を持ってきて"父"に対する思いを、思いつくままに書き始めた。

自分が子供の頃は、何かと口やかましい父だった。
夕食が説教の時間になる事も多かった。

また、子供達(A子と兄弟)が自分の思い通りにならないと
直ぐに大声で怒鳴りつける、そんな父だった。

『お父サンは、私の気持ちなんか興味ないんだ!!』
と、そう思う事も多かった。
お酒を飲んだ時に、仕事のグチを言うトコロも"嫌"だった。

また、建設会社で現場監督をしていた父は砂や土で汚れた仕事着で帰って来て、そのまま食事をする事が多かったが、それも"嫌"だった。

A子は、父に対しての気持ちを文章にしていった。

気が付いたら、父に対して『人でなし!!』とか
『あんたに親の資格なんかない!!』とか、かなり過激な言葉もたくさん書いていた。

ある出来事も思い出した。
自分が高校生の頃、クラスメイトの男の子と日曜日にデートをした事があった。

その男の子と歩いているトコロを、たまたま父に目撃され後で問いただされて説教された事があった。

両親には『女の子の友達と遊ぶ』と嘘をついていたのだが、父はその嘘を許せないようだった。
その時の、父の言葉は今も覚えている。

『親に嘘をつくくらい後ろめたい付き合い方をしているのか!!
お前は、"ろく"な女にはならん!!』

思い出しているうちに悔し涙が出てきた。 悔しさも文章にした。

『お父サンがそんな性格だから、嘘もつきたくなるんでしょ!!
自分に原因が有る事も分からないの?
それに『ろくな女にならない』って、なんてヒドイ言葉なの。
私がどの位、傷ついたか知らないんでしょう!!
あんたこそ、ろくな親じゃない!!
あれから私は、お父さんに心を開かなくなったのよ。自業自得よ!!』

書きながら、涙が止まらなかった。
気が付いたら、正午を回っていた。
書き始めて2時間近く経っていた。

十数枚のレポート用紙に、怒りを込めた文章が書きなぐってあった。
容赦なく書いたせいか、それとも思いっ切り泣いたせいか気持ちが随分、軽くなっていた。

A子は、午後1時を回ったところで、B氏に電話をした。

B氏『お父様を許す覚悟は出来ました?』

A子『正直なところ、その覚悟まではできていないかもしれません。
だけど、出来る事は何でもやってみようと思います。
許せるモノなら、許して"楽"になりたいとも思います』

B氏『では、やってみましょう。お父様を許すのは他でもない、あなた自身の"自由"のタメに許すんです。紙を用意して下さい。
そして、上の方に『父に感謝、出来る事』というタイトルを書いて下さい。
さて、お父様に対して感謝できるとしたらどんな事がありますか?』

A子『それはまず、働いて養ってくれた事ですね。
父が働いて稼いでくれたおかげで家族も食べていけたワケですし、私も育ててもらえたワケです』

B氏『それを紙に書き留めて下さい。他にもありますか?』

A子『う〜〜〜ん。
私が小学生の頃、よく公園に連れていって遊んでくれましたね』

B氏『それも書き留めておいて下さい。他には?』

A子『それ位でしょうか』

B氏『では、別の紙を用意して『父に謝りたい事』ってタイトルを書いて下さい。
さて、お父様に謝りたいことは、何かありますか?』

A子『特に浮かびませんが、あえて言えば『心の中で反発し続けた事』でしょうか。
ただ、心から謝りたいという気持ちにはなれませんが』

B氏『実感がともなわなくてもOKです。
形から入りますから。とりあえず、今おっしゃったことを書き留めて下さい』

A子『書き留めました。
で、形から入るといいますと、何をやればいいのですか?』

B氏『いいですか、今から勇気の出しどころです。
もしかしたら、あなたの人生で一番、勇気を使う場面かもしれません。
私が提案することは、あなたにとって、最も抵抗したくなる行動かもしれない。
実行するかどうかは自分で判断して下さいね。
今から、お父様に電話をかけて"感謝"の言葉とあやまる言葉を伝えるのです。
実感が湧いてこなかったら、用意した言葉を伝えるだけでもOKです。
『父に感謝できる事』と『父に謝りたい事』の2つの紙に書き留めた事を、読んで伝えるだけでOKです。
伝えたら、すぐに電話を切ってもらってかまいません。やってみますか?』

A子『…。確かに、今までの人生で使った事がない位、勇気を使わないとできませんね。
でも、これが私の悩みの解決に役立つなら、それだけの勇気を使う価値はあるんだ思います。だけど、難しいですね〜。』

B氏『やるかやらないかは、ご自分で決めて下さいね。
私も、一生に一度の勇気を使う価値はあると思います。
それから私は、次の予定がありますので、この辺りで失礼します。
もし実行されたらご連絡下さい。次のステップをお教えします。』

A子にとって救いなのは『形だけでイイ』という事だった。
『謝る』という事については、気持ちが伴わない。
『悪いのは父親の方だ』という思いがあるから、自分が謝るのは筋違いだと思う。

だけど、書き留めた文章を棒読みする位なら出来そうだ。
それならば、やってみた方がイイに決まっている、と思えた。

A子は『電話をかけよう』という気になってきた。
そして、電話をかけようとしている自分が、不思議だった。

こんなキッカケでもなかったら、A子が父親と電話で話すという事は一生、無かったかもしれない。

結婚して間もない頃は、実家に電話をして父が電話に出た時は、すぐさま『私だけど、お母さんにかわって』と言っていた。

しかし、今は『私だけど』と言っただけで、父の『お〜い、A子から電話だぞ』と母を呼ぶ声がする。
父も『A子から自分に用事があるはずない』という事が分かっているのだ。

しかし、今日は電話で父と話すのだ。
『躊躇していたら、ますます電話をかけにくくなる』と思ったA子は、意を決して直ぐに電話をかけた。

電話に出たのは、母だった。

A子『私だけど』

母『あら、A子じゃない。元気にしてる?』

A子『うん、まあね。…ねえお母さん、お父さんいる?』

母『えっ? お父さん? あなたお父さんに用なの?』

A子『う、うん。ちょっとね。』

母『まあ、それは珍しいことね。ねえ、お父さんに何の用なの?』

A子『えっ? え〜と、ちょっと変な話なんだけど説明するとややこしいから、お父さんにかわってくれる?』

母『分かった、ちょっと待ってね。』

父が出てくるまでの数秒間、A子の緊張は極度に高まった。
ずっと、父の事を嫌ってきた。 父に心を開くことを拒んできた。
その父に、感謝の言葉を伝え謝るのだ。 普通に考えて、出来っこない。

しかし、息子の事で悩みぬいたA子にとって、その悩みが深刻であるがゆえに、
普通だったら出来そうに無い行動を取っているのだった。

もしも、その悩みから解放される可能性があるならワラにもすがりたいし、どんな事でもする。
その思いが、A子を今回の行動に向かわせたのだ。

父『な、なんだ? わしに用事か?』

A子は、自分では何を言っているか分からない位、パニックしながら話し始めた。

A子『あっ!! あの〜、私、今まで言わなかったんだけど、言っといた方がイイかな〜と思って、電話したんだけど…、え〜と、お父サン、現場の仕事、結構、大変だったと思うのよ。
お父サンが頑張って働いてくれて、私も育ててもらったワケだし。
あの〜。
私が子供の頃、公園とかも連れて行ってくれたじゃない。
なんていうか「ありがたい」っていうか、感謝みたいな事、言った事ないと思うのよ。
それで、一度ちゃんと言っておきたいなと思って…。
それから私、心の中で結構、お父サンに反発してたし、それも謝りたいなと思ったの。』

ちゃんと『ありがとう』とは言えなかったし『ごめんなさい』とも言えなかった。
しかし、言うべき事は一応伝えた。
父の言葉を聞いたら、早く電話を切ろう。 そう思った。

しかし、父から言葉が返ってこない。

『何か一言でも言ってくれないと、電話が切れないじゃない』
そう思った時に、受話器から聞こえてきたのは母の声だった。

母『A子!! あなた、お父サンに何を言ったの?』

A子『えっ?』

母『お父サン、泣き崩れてるじゃないの!!
何かヒドイ事を言ったんでしょ!!』

受話器から、父が嗚咽する声が聞こえてきた。
A子はショックで呆然とした。

生まれて以来、父が泣く声を一度も聞いた事はなかった。
父はそんな強い存在だった。

その父のむせび泣く声が聞こえてくる。
自分が形ばかりの感謝を伝えた事で、あの強かった父が嗚咽しているのだ。

父が泣く声を聞いていて、A子の目からも涙が溢れてきた。
父は私の事をもっと、もっと愛したかったんだ。

親子らしい会話も沢山したかったに違いない。
だけど、私はずっと、父の愛を拒否してきた。父は寂しかったんだ。

仕事でどんなに辛い事があっても耐えていた強い父が
今、泣き崩れている。
娘に愛が伝わらなかった事が、そんなに辛い事だったんだ。

A子の涙も嗚咽へと変わっていった。
暫くして、また母の声。

母『A子!! もう落ち着いた?説明してくれる?』

A子『お母サン、もう1度、お父サンに代わってくれる?』

父が電話に出る。

父『(涙声で)A子、すまなかった。
わしは良い父親じゃなかった。
お前にはいっぱい嫌な思いをさせた。
うっ、うっ、うっ…(再び嗚咽)』

A子『お父サン。ゴメンナサイ。私こそ悪い娘でゴメンナサイ。
そして、私を育ててくれてありがとう。うっ、うっ、うっ…(再び嗚咽)』

少し間をおいて、再び母の声。

母『何が起きたの? また、落ち着いたら説明してね。一旦、電話切るよ』

A子は、電話を切ってからも暫く呆然としていた。
20年以上もの間、父を嫌ってきた。

ずっと父を許せなかった。
自分だけが被害者だと思っていた。

自分は父の一面だけに囚われて、別の面に目を向けようとはしなかった。
父の愛・父の弱さ・父の不器用さ…これらが見えていなかった。

父はどれだけ辛い思いをしてきたんだろう。
自分は父に、どれだけ辛い思いをさせてきたんだろう。
色々な思いが巡った。

『まずは、形から入ればOKです。気持ちは着いて来ますから』
と言ったB氏の言葉の意味が、ようやく分かりかけてきた。

『あと1時間くらいで○○(息子)が帰ってくる』
そう思った時に、電話が鳴った。
出てみるとB氏であった。

B氏『ど〜も、Bです。今、40〜50分位、時間が出来たので電話しました。
さっきは、次の予定が入ってたので、お話の途中で電話を切ったような気がしまして』

A子『実は私、父に電話したんです。
電話して本当に良かったです。
ありがとうございました。Bサンのおかげです』

A子は、父とどんな話をしたかを簡単に説明した。

B氏『そうでしたか。勇気を持って行動されて、良かったですね』

A子『私にとって、息子がいじめられてる事が最大の問題だと思っていましたが、長年父を許していなかった事の方が余程、大きな問題だったという気がします。
息子の問題のおかげで父と和解出来たんだと思うと、息子の問題が有って良かったのかな、という気すらします』

B氏『息子サンについてのお悩みを、そこまで"前向き"に捉えることが出来るようになったんですね。
潜在意識の法則というのがありましてね、それを学ぶと次のような事が分かるんです。
実は、人生で起こるどんな問題も何か大切な事を気付かせてくれるタメに起こるんです。
つまり偶然、起こるのではなくて起こるべくして"必然的"に起こるんです。
という事は、自分に解決出来ない問題は決して起こらないのです。
起きる問題は、全て自分が解決出来るから起きるのであり、"前向き"で"愛"の有る取り組みさえすれば、後で必ず『あの問題が起きて良かった。
そのおかげで…』と言えるような恩恵をもたらすのです』

A子『そうなんですね。
ただ、息子の問題自体は何も解決していないので、それを思うと不安になります』

B氏『息子サンの事は、全く未解決なままだと思っておられるんですね。
もしかしたら、解決に向けて大きく前進されたのかもしれませんよ。
心の世界は繋がっていますからね。
原因を解決すれば、結果は変わるしかないのです』

A子『本当に息子の問題は解決するんでしょうか?』

B氏『それは、あなた次第だと思いますよ。
さて、ココで少し整理してみましょうか。
あなたにとって、息子サンの事で一番辛いのは、息子サンが心を開いてくれない事でしたね。
親として、何もしてやれない事が情けなくて辛いとおっしゃいましたね。
その辛さをこれ以上味わいたくないと』

A子『はい、そうです。いじめられている事を相談もしてくれない。
私は力になりたいのに『放ってといて!!』って拒否されてしまう。
無力感を感じます。
子供の寂しさが分かるだけに親として、何もしてやれない程、辛い事はありません』

B氏『本当に辛い事でしょうね。
ところで、その辛さは誰が味わっていた辛さなのか、もうお解かりですよね』

A子『えっ?誰がって…(暫く沈黙)』

その時、A子の脳裏に父の顔が浮かんだ。
そうか!!
この耐えがたい辛さは長年、父が味わい続けたであろう辛さだ。

娘が心を開いてくれない辛さ。
娘から拒否される辛さ。 親として何もしてやれない辛さ。

私の辛さと一緒だ。
この辛さを、父は20年以上も味わい続けたのか。

A子の頬を涙が伝った。

A子『分かりました。私は、私の父と同じ辛さを味わっていたんですね。
こんなに辛かったんですね。父が嗚咽したのも分かります』

B氏『人生で起こる問題は、私達に大事なことを気付かせるべく起こるんです』

A子『改めて父の辛さが解かりました。
息子のおかげで、解かる事が出来たんだと思います。
息子が私に心を開いてくれなかったおかげで』

B氏『息子サンもお父様もあなたも、心の底では繋がっています。
お父様に対するあなたのスタンスを、あなたに対して息子さんが演じてくれたのです。
そのおかげで、あなたは気付く事が出来た』

A子『息子にも感謝したいです。
『大事な事に気付かせてくれて、ありがとう』って気持ちです。
今まで『どうしてお母さんに話してくれないの?』って心の中で息子を責めていました』

B氏『今なら、息子サンの気持ちも理解出来ますか?』

A子『そうか!! 私が子供の頃、口うるさい父が嫌でした。
色々、口出ししてきたりするのが嫌でした。
今考えてみれば、それも父の愛情からだったんでしょうが、当時は負担でしたね。
今、息子も同じ思いなんだと思います。
私の押し付けがましい愛情が負担なんだと思います』

B氏『あなたが子供の頃、本当はお父サンに、どんな親で居て欲しかったんでしょうね?』

A子『私を信頼して欲しかった。
「A子なら大丈夫!!」って信頼してほしかったです…(暫く沈黙)。
私、息子を信頼していなかったと思います。
「私が手助けしないと、この子は問題を解決出来ない」と思っていました。
それで、あれこれ問いただしたり、説教したり…。
もっと息子を信頼してあげたいです』

B氏『あなたは、お父様の辛さも理解し息子サンの辛さも理解されましたね。
では次に、御主人との事に移りましょう。
朝、お電話を頂いた時に「あなたの大切な息子サンが人から責められてしまう原因は、
あなたが身近な誰かを責めてしまっている事です」と、お話したのを覚えていますか?』

A子『はい、覚えています。主人を尊敬出来ないという話をしました』

B氏『ではもう一度、御主人に対してどんな風に感じておられるか、話してもらえますか?』

A子『どうしても、主人に対して「教養のない人」とか「思慮の浅い人」という風に見てしまうんです。
息子の事にしても、私がこれだけ悩んでるのに根拠なく楽観的なんです。
それで主人に対しては、グチこそはぶつけますが、ちゃんと相談したりする事はありません。
主人がアドバイス等してきても受け付けられないんです』

ココまで話しながらA子は、自分の夫に対するスタンスが、父親に対して取ってきたスタンスに似ている事に気が付いた。

A子『私が父に対して取ってきたスタンスと似ていますね』

B氏『そうなんです。女性の場合、父親に対してとってきたスタンスが御主人に対してのスタンスに投影される事が多いんです。
ところで、お聞きしていると、御主人は息子サンの事を信頼されているようですね』

A子『あっ!! そうですね!!
そうか、主人のそういうトコロを見習うべきだったんですね。
息子は主人に対しては結構、本音を言っているみたいなんです。
息子は信頼されてると思うから、主人には心を開くんですね。
私は主人の良いトコロを全く見ていませんでした』

B氏『なるほど、そんなことを感じられたんですね。
さて、では宿題を差し上げます。
やるかどうかは自分で決めて下さいね。
今日の午後『父に感謝出来る事』と『父に謝りたい事』という2種類の紙を作ってもらいましたよね。
その紙に、お父様に感謝出来る事と謝りたい事を、書き出せるだけ書き出して下さい。
紙は何枚使ってもOKです。
それが終わったら、もう1つ紙を用意して下さい。
その紙のタイトルは『父に対して、どのような考え方で接したら良かったのか?』です。
これは過去のお父様との関係を後悔するタメに書くのではありません。
これからの御主人との接し方のヒントが見つかるはずです。
そして、もう1つ息子サンが夜眠られたら、息子サンの寝顔を見ながら心の中で息子さんに
『ありがとう』を100回、囁きかけて下さい。
どうですか、やってみたいですか?』

A子『ハイ!! 必ずやってみます』

電話を切って間もなく、息子が帰って来た。
息子はランドセルを玄関に投げると、いつものようにグローブとボールを持って、公園に行った。

『昨日、友達に追い出されたというのに、この子は、また公園に行くの?』
A子の心は心配な気持ちでいっぱいになった。

A子は、その心配な気持ちを紛らわすように、宿題に取りかかった。
父に対して感謝できる事が沢山、思い浮かんだ。

現場監督のキツイ仕事を続けて家族を養ってくれた。

私が子供の頃、夜中に高熱を出した事が何度かあったが、その都度、車で救急病院まで連れて行ってくれた。(肉体労働をしていた父にとって、夜中はしんどかったはず)

私が子供の頃、よく海や川に連れて行ってくれて、泳ぎを教えてくれた。

子供の頃、私はメロンが好きだったが毎年の私の誕生日には、メロンを買って帰って来てくれた。

子供の頃、近所のいじめっ子にいじめられていた事があったが、その子の家に抗議しに行ってくれた。

私は私立大学に入ったが、文句を言わず学費を出してくれた。(当時の我が家にとって、大きな負担だったはず)

私の就職先が決まった時に、寿司を出前で取ってくれた。(とても豪華な寿司だった。その時、私は『寿司は好きじゃない』と言って食べなかった。父はしょんぼりしていた)

嫁入り道具に、高価な桐のタンスを買ってくれた。

『感謝したい事』に連鎖して『謝りたい事』も浮かんできた。
『感謝したい事』と『謝りたい事』を書きながら、涙が浮かんできた。

『私は、こんなにも愛されていた。
反発する私を、愛し続けてくれていたんだ。
許せないという思いに囚われていたから、その"愛"に気付かなかったんだ。
そして、こんなにも愛してもらいながら、私は父に何もしてあげてない。
親孝行らしい事も殆どしていない』

自分が父親の仕事を尊敬していなかった事にも気付いた。
父親の現場監督の仕事に対して『品がない』とか『知的でない』とか思っていた。

父親が仕事を頑張り続けてくれたおかげで、自分は大学まで行かせてもらえたのに。
その事を初めて気付いた。

父親の仕事に対して、"尊敬心"と"感謝"を感じた。
そして今、自分の夫の仕事に対して『知的でない』というイメージを持っている。

自分の夫に対する『教養がない』という嫌悪感を伴うイメージは、父に対して持っていたイメージとソックリである。

自分は、夫に対しても感謝できる事が沢山あるはずだ。

そんな事を考えながら、続いて『父に対して、どのような考え方で接したら良かったのか?』
というタイトルの紙を用意した。

これについては、直ぐに文章が浮かんできた。

『父の言動の奥にある愛情に気付く事。
自分が不完全な人間であるように、父も不完全で不器用な人間である事を理解する事。
してもらっていることに感謝をする事。
愛してもらうだけではなくて、自分から愛する事(父を喜ばそうとする事)。
そしてその上で、"嫌"な事は"嫌"と伝えて、お互いが居心地、イイ関係を築く事』

これはまさに、これから夫に対してするべき考え方だ!! と思った。
働いてくれている夫。
自分の人生のパートナーで居続けてくれている夫。

自分は夫に対して感謝する事を忘れていた。
夫に対して、こんなに素直な考え方が出来るのは初めてかもしれない。

これは父に感謝できた事と関係があるのかもしれない。
今日は夫に感謝の言葉を伝えよう。

そんな事を考えているうちに、外が薄暗くなりかけていることにA子は気が付いた。
思えば、今日は家事らしき事を殆どしていない。

朝の9時ごろB氏に電話してから1日中、自分と向き合っていた。
『晩御飯の用意、どうしよう?』そう思った時に、息子が帰ってきた。

息子『ねえ、お母さん聞いてよ!!』

A子『どうしたの? 何かイイ事あったの?』

息子『C君、知ってるでしょ。実は昨日、C君に公園でボールぶつけられたんだ』

A子『あっ、あ〜、そうなの。C君って、あなたを一番いじめる子だよね』

息子『さっき公園から帰ろうとしたらC君が公園に来てさ〜。
で「いつも、いじめててゴメンな」って言ってくれたんだ』

A子は『そうだったの!!』と言いながら、まるで奇跡でも体験しているような気持ちになった。
そして、心から感謝の気持ちが湧いてきたのだった。

A子は、夕食の準備をするより息子と話そうと思い、出前を取った。
出前が届くまでの間、A子は息子に次のような事を伝えた。

『今まで、あなたの事に口出しをし過ぎてゴメンね。
これからは、なるべく口喧しくしないように気を付けるからね。
そして、お母サンの助けが必要な時は、いつでも遠慮なく相談してね。
あなたの事を信頼してるからね』

息子は本当に嬉しそうな顔をして『分かった、ありがとう』と答えた。
やはり息子は、母親に信頼してもらいたかったのだ。

『今日は、何か変だな〜。イイ事が続くな〜』と息子が続けた。
A子も幸せな気持ちになった。

間もなく出前が届いた。

A子『お母さんは、お父さんが帰って来るのを待つから先に食べてね』

息子『えっ? どうしたの? いつもは先に食べるのに』

A子『今日は、お父さんと一緒に食べたい気分なのよ。
お父さん、お仕事頑張ってくれて疲れて帰ってくるからね。
1人で冷めた親子丼、食べるの寂しいでしょ』

息子『じゃ〜、僕もお父サンと一緒に食べる!!
3人で食べる方が楽しいでしょ』

A子『本当にあなたは優しい子ね。お父サンに似たのね』

息子『なんか変だな〜。
いつもお父サンの事を『デリカシーがない』とか言ってるのに』

A子『そうよね。お母サンが間違っていたのよ。
お父サンは、優しくて男らしくてたくましくて…、男の中の男よ』

息子『勉強しないと、お父サンのような仕事位しか出来なくなっちゃうんでしょ?』

A子『ゴメンね。それもお母サンが間違ってたのよ。
お父サンの仕事は立派な仕事。世の中の役に立ってるのよ。
それに、お父サンが働いてくれてるおかげで、こうやってご飯食べたり出来るんだからね。お父さんの仕事に感謝しようね』

息子『お母サン、本当にそう思う?』

A子『ウン。思うよ』

A子がそう言った時の息子の笑顔は、その日で1番嬉しそうな笑顔だった。
子供は本来、親を尊敬し親をモデルして成長する。

A子の言葉は、息子に対して『お父サンを尊敬してもイイよ』
という許可を与えた事になる。
息子はその事が何よりも嬉しかったのだ。

暫くして夫が帰って来て、3人で冷めた親子丼を食べた。

自分の帰りを待っていてくれた事が嬉しかったのか、夫も上機嫌だった。
冷めた親子丼を『美味い、美味い』と言いながら食べていた。

夫が風呂に入っている間に、息子が眠りについた。
A子は息子の寝顔を見ながら、心の中で『ありがとう』を唱え始めた。
その言葉の影響なのか、心の底から感謝の気持ちが湧いてきた。

『この子のせいで私は悩まされていると思ってきたけど、この子のおかげで大切な事に気付けた。
本当は、この子に導かれたのかもしれない』

そう思っていると、息子が天使のように見えた。
いつの間にか、涙が溢れてきた。 (本当に今日は、よく泣く日である)

間もなく電話が鳴った。出てみるとFAXであった。
母の字で次のような事が書いてあった。


・・・・・・

A子へ…

今日の事、お父サンから聞きました。
お父サン、話しながら泣いていました。

お母サンも嬉しくて涙が出ました。
お父サンは『70年間、生きてきて今日が1番嬉しい日だ』と言っています。

晩御飯の時にいつも、お酒を飲むお父サンが『酒に酔ってしまって、この嬉しい気持ちが味わえなかったら勿体無い』と言って、今日はお酒を飲みませんでした。

次は、いつ帰ってきますか。楽しみにしています。

母より

・・・・・・


『晩酌を欠かした事がない父が、お酒を飲まなかったなんて』

自分が伝えた言葉が、父の心をどんなに幸せな気持ちで満たしたのであろう。
A子の目からは、またもや涙が溢れていた。

『どうした? 泣いてるのか?』

風呂から、出てきた夫が聞いてきた。
A子は、その日起きた事を全て話した。

朝、B氏に電話をかけた事。
午前中は、父への恨みつらみを紙に書きなぐったこと。
午後、父に電話して和解した事。

『そうか、お父サンも泣いてはったか』

夫も、目に涙を浮かべながら聞いてくれた。
そして、息子がいじめっ子から謝られた事。

『ふ〜ん。不思議な事もあるもんやな。
Bサンのやり方は、俺にはよく分からんけど、
お前も"楽"になったみたいでよかったな』

続けて、A子は泣きながら夫に謝った。
そして、夫も泣きながら聞いたのだった。

次の日、A子はB氏に報告して、心からのお礼を伝えた。
朝1番で夫からも電話を入れていたようだ。

B氏『御主人からも電話もらいました。
お役に立てて何よりです。
あなたの勇気と行動力を尊敬します。
さて、これからが大切です。
毎日、お父様と御主人と息子サンに対して、
心の中で『ありがとうございます』という言葉を
100回ずつ唱える時間を持って下さい。
それから、おススメの本があります。
後で、何冊か選んで、そのリストをFAXしておきますので是非、買って読んでみて下さい』

その日の夕方の事である。

『ただいまっ(^.^)!!』

元気な声で息子が帰って来た。

『お母サン、聞いて!! 今日ね、友達から野球に誘われたんだ!!
今から行ってくるから!!』

息子はグローブを持って飛び出していった。

A子の目には、またもや涙が滲んでいた。
声が詰まって『行ってらっしゃい』の一言が言えなかった

END

 


〜あとがき(野口氏の)〜

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
あなたは、どんな事を感じましたか?

誰かに対する感謝の気持ちが湧いてきた方は
是非、その感謝を言葉にして伝えてみてください。

誰かに『誤りたい』と思った方は、その気持ちが冷めないうちに行動に移してみてください。

A子サンの勇気ある行動がA子さんの人生を変えていったように、あなたの勇気ある行動は、あなたの人生を変えていく事と思います。

このレポートの事を誰かに教えてあげたいと思った方は是非、教えてあげて下さい。

その人の幸せな笑顔を想像して是非、分かち合ってあげて下さい。
このレポートは、コピーも転送もOKです。

あなたの『与える行動』が、誰かの人生に和解や許しをもたらすかもしれません。

あなたに、沢山の素晴らしい出会いが引き寄せられますように!!

2005年12月20日

野口嘉則
(このお話は実話ですが、
登場人物の職業等を多少変えてストーリーを設定しています)


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